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西都保健生活協同組合 
「たぬきのひとりごと」

医者がいないと死ねないか 死難民解消のために4

特別養護老人ホームでの、施設看取り援助。そこには、医療倫理的な効果も、たくさんありました。医学的適応、患者の意向(代諾)QOL、正義の4つの項目に分けて、考えてみます。

医学的な適応

それまでは、入居者が状態変化すると、苑の看護師さんの判断で、救急病院に搬送することになっていました。病院では、初めて会うことになる医師と、離れて生活する家族が、短時間のうちに、死にゆく過程を治療方針として、決定することもありました。

 普段の様子を良く知らないままの判断ですから、必ずしも適切にならない場面もあり、治療の可能性があるのに、終末期とみなしてしまう(みなし終末期)になってしまうこともないとは言えない状況でした。

現在は、本人/家族、嘱託医、S苑・当院の職員が多職種で、合議できる環境となっていて、集団で診る看ることで、軽微な症状変化にも早期対応でき、重点的なケアにより、受診回避が可能となる場合もあります。また、高度医療への受診による適切な医療処置が可能ともなっています。

 

患者の意向(代諾)

いのちの最期を、どこでどのように過ごしたいのか。

特別養護老人ホームという特性上、認知症等により本人の意向を確認しづらい場合が多いこともあります。もっとも、病院での最期が基本でしたから、家族にも、その希望を問うことは少なかったようです。

「医療」の中で決定していたこれまでとは異なり、現在は、本人も含めた物語の主な登場人物たちが、人生という物語を紡ぐために「生活」の中で、話し合って決定しています。

家族だけでなく、毎日お世話している職員が、本人の意向を最大限に反映させられるよう配慮し、余裕をもって決定できるようになっています。

QOL

一番の効用は、苑職員のいのちの教育になり、仕事をする上でのモチベーションを高めることにつながっていることでした。

これまでは、終末期は入院対応となっていたため、自らの責任を離れほっとしながらに、病院における医療の中での最期を、間接的に聞き及ぶだけで、どうしても当事者意識を持つことが難しかったようです。

特に介護職員は、死ぬことではなく、一緒に生きることへ目をむけられるようになっています。なお一層腰を据えてのお世話をしようという気持ちを持てるためか、他の利用者への対応も、一期一会を大切にする気持ちが、膨らんでいるのが感じられます。

苑看護師にとっても、新たな挑戦の機会になったようです。医療の中での死に慣れてきたため、心理的負担も避けられない一方、専門家として要介護期の高齢者をどう看るか、自分たちの責任の中で如何に看取りをするか、看護師の仕事を改めて考える機会にもなっている。

家族が苑を訪れる回数も増え、苑全体の活気も出てきています。

 

正義

経過観察も含め、苑でできる範囲の医療提供が拡がり、苑での死亡確認が可能となっています。そのことで、死にゆく時間を、救急病院の高度医療を使って過ごすことになっていたこれまでとは異なり、救急医療や病院医療の負担が軽減でき、医療資源の適正配分に貢献もできています。

一方で、いわゆる老衰の状態は、判断が難しいため、安易にみなし終末期にならないように、援助することで、利用者にとっても、適切に、医療を活用できることにもなります。

 

めでたし めでたし

私たち医療者が医療の中にいて、患者として診る看るのではなく、生や死を医療から解放し、私たち医療者も、一緒に物語を紡ぐ。その意識を持つために、北多摩クリニックでは、特別養護老人ホームでの施設看取りの援助を始めました。

私 一人称。あなた 二人称。それぞれの物語に、私も、そしてあなたも大切な登場人物としてあります。私の人生ではなく、あなたの人生だから、あなたが決めなさいといってしまったら、水臭い。あなたの物語の登場人物としての私にも、お手伝いをさせてほしい。そんな1.5人称の関係って変だろうか?

 

きずな2013年3月号

 

 

(北多摩クリニック 保坂幸男)