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西都保健生活協同組合 
「たぬきのひとりごと」

健康と不健康のはざまで 悩める医療者

北多摩クリニックでは 毎年市民健診をしていますが受診者は 何を求めて 健診を受けているのでしょうか。生活習慣病予防のきっかけづくりに健診をうけようと呼びかけつつも 私たち自身も その意味をよくわからずにいます。これまで深く考えてこなかった反省をもとに また日常の診療にも生かすため 受診者が 健診をどのようにとらえているのか また 健康について どう考えているのか その問いに答える一つのアプローチとして受診者にアンケートし その結果を踏まえ考えてみました。

 

 

 

【方法】 北多摩クリニックで特定健診・高齢者健診受診者を対象に記入式アンケート(無作為にお渡し)

アンケート内容:性別・年齢。かかりつけ医・定期通院の有無。健診を受けた動機。健診で異常が発見された場合に通院/精密検査するかどうか。自分で健康(不健康)と思うか その理由

 

【結果】 回収数339 (男122217

年齢39歳以下6 ,40-6474, 65-6965, 70-7475, 75-7968, 80歳以上45

かかりつけ医いる268,いない63,不明8

定期通院している219,通院なし105,不明15

健診毎年受診305, ときどき20, 初めて7, 不明7(受診動機 約9割が「市から通知がきたから」)

異常発見時通院する307, しない10, わからない15, 不明7

異常発見時精密検査受ける300,受けない9,わからない13,不明17

健康と思う234 (理由複数回答:症状なし127, 心配事なし32, 動ける117, 食べられる125, 内服なし40),

不健康と思う101 (理由複数回答:症状あり48, 心配事あり16, 動けない3, 食べられない1, 薬内服あり57),不明4

 

【考察】回収したのは339枚で女性217 男性122でした。今年度の市民健診受診者は533名でしたから 約3分の2の方にアンケートできたことになります。年齢分布も市民健診受診者と概ね 同じ割合でした。

当院の市民健診受診者は 毎年受けている方が中心(90.0%)であり 異常発見時には、通院する/精密検査を受けるといずれも約9割の方が回答しています。つまり 受診する身体と気持ちを持った比較的「元気な」方が多かったと考えられます。だからなのかもしれませんが受診動機のほとんどが 心身のチェックという意識ではなく 市からの通知が来たから受診したとしており なぜ健診を受けるのかという「健診」の意味を お互いに明確にできるものにはなりませんでした。

 

 清瀬市では毎年 高齢者健診受診者は 対象者の約半数に留まっています。今回のアンケートで 受診者の9割は毎年市民健診を受けていて 8割はかかりつけ医がいるとの回答でした。当院が狭い地域を対象とする かかりつけクリニックであるという 特殊な事情はあるかもしれませんが 裏返すと 高齢者健診を受診していない残りの半数の中には かかりつけ医がいない或いは市民健診を受けたことがほとんどない方が 多数いる可能性があり その方たちは 重症化し易く いざというときの相談先に困り 難民化する可能性が高い 本当に健診が必要な方たちなのかもしれません。

とすると 健診を受診していない方を いかに医療或いは介護と結びつけるかについて 「市からの通知」という受診動機を さらに効果的にしていくことが大切で 対市交渉の場などを利用して 行政と一緒に検討していきます。

 

一般的にある 健康は是で不健康は非という健康観は 身体の健康と直結している印象を持ちますが 今回のアンケートでも「健康」「不健康」という言葉が 主に身体の症状をさしている結果となりました。また 健診で異常が見つかった場合にも 通院・精密検査をしない/受けない・わからないと回答した方の半数以上が 身体の症状が無いことを理由に挙げていました。一般的にある不健康の最たるものとしての寝たきり(身体)に対し「あーいう風になりたくない」「寝た切り予防」というもののことで「健康づくり」「健康維持」と話が始まります。でも 寝たきりは本当に不健康なのか 寝たきりにも「あり(健康)」とする価値観は「ない」のでしょうか。私たちの利用者さんの中には 身体が十分に動かなくとも 意欲をもって「健康心」で生きている方が たくさんおられ 私たちは たくさんの元気を頂いています。

医療者である私たちも WHOのいう健康の定義についてさえ十分に考え話し合うこともせずにいました。私たちは今 こうして仕事をしてはいますが 毎日たくさんの人に迷惑をかけお世話になっています。それは 家族や 一緒に仕事をしている同僚たちには勿論のこと 会ったこともない これからも会うことのない 東京中日本中世界中のたくさんの方が 私たちが 食べるために 着るために 暖かい部屋で過ごすために 寝るためにも いろいろなことをして働いてくれているから 私たちは生きていられます。さらには 地球の歴史の中で生きています。過去・現在 そして未来の直接的・間接的な「お世話」の恩恵を受け生きています。

寝たきりになったときには 直接のお世話が 今より多く必要にはなりますが それは目に見えない間接的なお世話に比べればごくごく一部でしかないかもしれません。寝たきりの方を直接お世話している方も たくさんの間接的なお世話をしてもらいながら生きているのですから お互い様のことでしょう。寝たきりの方が何もしていないかというとお世話する方に 人生を生きるということを考える場を提供するという大きな社会貢献も しています。正々堂々 寝たきりになっていいのかもしれません。支え合っていることを感じながら積極的に生きることを大切にしたいと考えます。

一般的なイメージにある健康だけを 上っ面で目指すのではなく 寝たきり予防の一方で健康心をもつ寝たきりもありとする積極的な生き方について その延長線上には「健康的な死」ということもあるかもしれず 元気なうちから一緒に想像することも 私たち かかりつけ医の役割りかもしれません。